社内の資料をAIに貼っていいのか。社名と金額を伏せて貼り、答えを元に戻す手順
情報漏洩が心配で、仕事の文章をAIに貼れないときの手順です。置き換え表を先に作り、貼る前に元の言葉が残っていないか確かめます。同じ相談を「社名だけ伏せた版」と「数字まで全部消した版」で送り、返ってきた案を並べました。消しすぎると一般論になります。
会議のメモも、見積の相談も、AIに貼れば早く片づきます。
ただ、その文章には社名と金額が入っています。
「これ、貼っていいんだっけ」で手が止まる。そこで閉じてしまう人は多いはずです。
この記事では、貼る前に何を置き換えるかを決めて、返ってきた答えを元に戻すまでを書きます。
この記事で分かること
- そのままコピーして使える置き換え表(1つだけ載せます)
- 伏せるものと、残すものの分け方
- 消しすぎると何が起きるか(同じ相談を2通りで送って比べました)
こんな人に向けて書いています。 仕事の文章をAIに貼りたいけれど、情報漏洩が心配で手が止まっている会社員。勤務先がAIの利用を禁止してはいない人。
この記事で決められるのは、自分が貼る文章の中身までです。 勤務先のルールそのものは変えられません。そこは最後の章に書きます。
全体の流れ
3つです。
- 置き換え表を作る(元の言葉と、貼るときの言葉)
- 置き換えてから貼る(元の言葉が残っていないか検索で確かめる)
- 返ってきた答えを、表の逆で戻す
大事なのは1です。 表を先に作らずに「それっぽく伏せる」と、必ずどこかに元の言葉が残ります。
2は置き換えて貼るだけです。3は、社内で使う形に直す作業です。
1. この置き換え表をコピーする
この形をそのまま使えます。 左に元の言葉、右に貼るときの言葉を書きます。
| 種類 | 元の言葉(例) | 貼るときの言葉 |
|---|---|---|
| 取引先の名前 | ホシノ精機 | 取引先A |
| もう1社 | ミナト工業 | 取引先B |
| 人の名前 | 大西部長 | 先方の購買責任者 |
| 自分の名前 | 田中 | (書かない) |
| 契約番号・案件番号 | HS-2231 | (書かない) |
| 日付 | 2026年11月30日 | 今年の11月末 |
| 金額 | 480万円 | そのまま残す |
金額を残すのは意図してのことです。 理由は4章に書きます。
表は使い捨てにしません。 同じ取引先の相談は何度も来るので、1枚持っておくと2回目から作らずに済みます。
2. 練習用の相談メール
この記事の中だけの架空のメールです。 そのままコピーして試せます。
件名:ホシノ精機さま 保守契約の更新について
営業部の田中です。
ホシノ精機さまの保守契約(契約番号 HS-2231)が2026年11月30日で切れます。
先方の購買部・大西部長から、更新するなら年額を今の480万円から
400万円まで下げてほしいと言われています。
こちらの原価は年320万円です。400万円まで下げると粗利は80万円で、
去年の160万円から半分になります。
同じ内容をミナト工業さまには520万円で出しているので、
金額をそろえてほしいと言われると困ります。
9月12日の部内会議までに、下げる・下げない・条件付きで下げる の
どれかを決める必要があります。
このメールには、置き換えたいものが6種類入っています。 社名2つ、人名2つ、契約番号、そして具体的な日付です。
3. 置き換えた文章と、返ってきた案
置き換え表のとおりに直すと、こうなります。
次の相談について、部内会議へ出す案を3つ作ってください。
それぞれ利点と欠点を1つずつ書いてください。
取引先Aの保守契約が今年の11月末で切れます。
先方から、更新するなら年額を今の480万円から400万円まで
下げてほしいと言われています。
こちらの原価は年320万円です。400万円まで下げると粗利は80万円で、
去年の160万円から半分になります。
同じ内容を取引先Bには520万円で出しているので、
金額をそろえてほしいと言われると困ります。
部内会議までに、下げる・下げない・条件付きで下げる の
どれかを決める必要があります。
返ってきた案です。 そのまま載せます。
案1 400万円を受け入れない
利点:取引先Bへ出している520万円との整合が保てる
欠点:更新されなければ年間の粗利160万円がまるごと消える
案2 400万円を受け入れる
利点:契約は確実に続き、80万円の粗利は残る
欠点:他社にも同じ水準を求められる材料を作ってしまう
案3 条件を付けて400万円にする
利点:値下げの理由が「複数年」になり、取引先Bへの説明が立つ
欠点:先方が単年更新を望む場合は交渉が長引く
条件の例:契約期間を3年にする、訪問回数を年12回から年8回に減らす
社名を伏せても、案の中身は変わりませんでした。 案3の「複数年にする代わりに下げる」は、社名を知らなくても出てきます。
理由ははっきりしています。 ここで効いているのは金額の関係だけだからです。
原価320・現在480・希望400・他社520。この4つの数字の並びが、案を決めています。
4. 数字まで全部消すと、どうなるか
もう一度、金額と原価を全部消して送りました。 「値下げを求められています」だけにした版です。
返ってきたものです。
案1 現行価格を維持する
案2 値下げに応じる
案3 条件付きで応じる
いずれの場合も、原価と利益率を確認し、他の取引先への影響を
考慮したうえで判断することをおすすめします。
案の名前は同じで、中身が消えました。
「原価と利益率を確認し」と書いてありますが、それは相談した側がいちばん知りたかったことです。 消した情報を、そのまま質問として返されています。
| 社名だけ伏せた版 | 数字まで消した版 | |
|---|---|---|
| 案の数 | 3つ | 3つ |
| 判断の材料 | 金額で説明されている | 無い |
| 条件の具体例 | 3年契約・訪問年8回 | 出てこない |
| そのまま会議に出せるか | 出せる | 出せない |
ここが分かれ目です。 伏せる対象は「相手が誰か」であって、「いくらか」ではありません。
5. うまくいかないとき
元の言葉が1つだけ残っていた
いちばん多い失敗です。 本文で置き換えても、件名や署名に残ります。
貼る前に、置き換え表の左の言葉で1つずつ検索してください。 目で読み返すのでは見つかりません。
残っていると、AIの答えにもその名前が出てきます。 答えを見て気づけることもありますが、気づけないほうが普通です。 AIは伏せ漏れを教えてくれません。
戻すときに、うまく置き換わらない
「取引先A」で戻そうとしても、答えの中が「取引先A社」になっていることがあります。
今回の3案では起きませんでしたが、起きうる形です。 戻したあとに、置き換え表の右の言葉でもう一度検索してください。
1件でも残っていたら、そこは戻し漏れです。
答えが一般論になる
4章の状態です。 消しすぎています。
判断に使う数字を戻してください。 金額そのものを出したくない場合は、原価を100とした比率に直す手があります。
原価100、現在150、希望125、他社163。関係だけが残り、実額は出ません。
やってみて分かったこと
今回のゴールは「社名を伏せたまま、使える案を受け取ること」でした。結果は、達成です。 3案とも、そのまま会議の材料になります。
ただ、いちばんの発見はそこではありませんでした。
伏せる作業は、隠す作業ではありませんでした。 「この相談で本当に要るのはどれか」を選ぶ作業でした。
社名を消しても案は変わりません。金額を消すと案が消えます。つまり、この相談の中身は金額のほうにありました。
そして、危ないのも金額のほうです。 前の記事にも書きましたが、金額と日付と部署名が揃うと、社名が無くても案件は特定できます。
だから日付の粒度を落としました。 「2026年11月30日」を「今年の11月末」に、契約番号は書かない。社名だけ消して安心するのが、いちばん危ない状態です。
確かめていないことも書いておきます。
- 送ったのは、この相談で1回ずつです。 AIの出力は毎回同じにはなりません。
- 勤務先のルールに合うかは、この記事では判定できません。 置き換えても社外へ出すことに変わりはありません。
- 入力が学習に使われるかどうかは、サービスと契約と設定で変わります。 ここでは扱っていません。
次にやること
まず、自分がよく貼る文章を1つ選んで、置き換え表を1枚作ってみてください。 表を作るところまでが本番です。
そのあと、置き換えた版と、金額まで消した版の2通りを送って並べてください。 どこまで消せるかは、相談の中身で変わります。
長い文章をそのまま貼るなら、長い文章をAIに要約させる。数字と「決めること」を落とさない頼み方もあわせて読んでください。要約は、元の文章を丸ごと渡す作業です。 この記事の置き換えが、いちばん効く場面です。
会議のメモから貼る形を作るなら、議事録をAIに書かせる。コピーして貼るだけの手順へ。議事録には社名と人名がそのまま並びます。
決まった案を資料にするなら、資料作成をAIに頼む。PowerPointの構成案を作らせる指示文へ。3案の比較は、そのまま1枚のスライドになります。
「気づかないうちに、それらしい言葉で埋まっている」という今回の形は、AIの「たぶん壊れています」を確かめたら、壊れていなかったと同じです。私が実際に信じかけた記録が残っています。
使うときの注意
置き換えは、勤務先のルールの代わりにはなりません。
- 勤務先がAIの業務利用を認めていない場合は、置き換えても貼らないでください
- 顧客との契約に、第三者への開示を禁じる条項があることがあります
- 個人情報は、置き換えても「他の情報と照合すれば分かる」形が残ります
先に確認する順番は、ルール、契約、そのあとが置き換えです。
練習には、この記事の架空のメールをそのまま使えます。 実際の仕事で使うときは、貼る前に必ず、置き換え表の左の言葉で検索してください。