AIの文章作成が「それらしいだけ」になる理由。社内のお知らせ文で試した
会議室のルール変更を知らせる社内文書を、AIに2通りで書かせました。何も渡さずに頼んだ版は、日付も部署名も理由も全部それらしい嘘でした。材料を先に書き出してから頼む手順と、書き上がった文から嘘を機械的に見つける確かめ方を載せています。
「お知らせの文を書いておいて」とAIに頼むと、数秒で整った文が返ってきます。
読むと、ちゃんとしています。 敬語も崩れていないし、構成も自然です。
ただ、そのまま社内へ流すと困ります。日付も、部署名も、変更の理由も、AIが勝手に決めているからです。
この記事では、同じお知らせを2通りの頼み方で書かせて、並べます。
この記事で分かること
- そのままコピーして使える指示文(本編に1つ、うまくいかないときの直し方に3つ)
- 何も渡さずに頼むと、どこが嘘になるか(実際に2通りで書かせて数えました)
- 書き上がった文から、嘘を機械的に見つける確かめ方
こんな人に向けて書いています。 社内向けのお知らせ、案内、連絡文を書く会社員。文章を書くのが遅くて困っているというより、書いた文を自分で見直すのが不安な人に向いています。
この記事で扱うのは、社内向けのお知らせ文だけです。 提案書と報告書は組み立て方が違うので、ここでは触れません。
全体の流れ
3つです。
- 決まっている事実を、箇条書きで先に書き出す
- その箇条書きを渡して書かせる
- 書き上がった文を貼り直して、「材料に無いことを並べて」と聞く
大事なのは1です。 ここを飛ばすと、AIは足りない部分を自分で埋めます。
埋めた部分は、読んでも分かりません。日本語として自然だからです。
1. この指示文をコピーする
この形をそのまま使えます。 最後の【守ること】まで含めて1つの指示文です。
次の材料だけを使って、社内向けのお知らせ文を書いてください。
【読む人】全社員。この件の事前説明は受けていません
【目的】いつから何が変わるかを、読んだその場で分かるようにする
【形】件名と本文。件名だけで内容が分かるようにする。本文は番号付きの3点まで
【守ること】
・材料に書いていないことを、書き足さないでください。
日付・部署名・担当者名・理由・手続きは、材料に無ければ書かないでください。
・材料に「まだ決まっていない」とあるものは、決まっていないと書いてください。
・書いたあとに、材料のうち文へ入れなかったものを箇条書きで並べてください。
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【材料】
(ここに箇条書きを貼る)
効くのは【守ること】の1つ目です。 ほかの3つは体裁を整えるだけで、中身の正しさには効きません。
【読む人】は書き換えてください。 事前説明を受けている相手なら、前置きは要らなくなります。
2. 材料の書き出し方
材料は、文章にしないでください。 箇条書きのまま渡します。
この記事で使う材料です。架空の会社の、架空の変更です。
【材料】
・変えるのは「1回の予約で押さえられる時間」だけ。2時間 → 1時間
・対象は3階の小会議室A・Bの2部屋だけ。大会議室は変わらない
・開始は10月1日(木)
・変える理由:小会議室の予約の6割が1時間以内に終わっているのに、
2時間で押さえられたままになっている
・1時間を超えて使いたいときは、続けてもう1枠取れば使える。申請は要らない
・まだ決まっていないこと:大会議室を同じルールにするかは未定
・問い合わせ先:施設担当(内線2210)
7行のうち、5行は「変わること」ではありません。 対象の範囲、理由、抜け道、決まっていないこと、問い合わせ先です。
この5行が、読んだ人の質問を先に潰します。 変更そのものは1行で足ります。
「まだ決まっていない」の行を必ず入れてください。 これが無いと、AIは決まったことのように書きます。
3. 何も渡さずに書かせた版と、材料を渡した版
まず「会議室の予約ルール変更のお知らせを社内向けに書いてください。」とだけ書いて送りました。返ってきた文です。
件名:会議室予約ルール変更のお知らせ
社員各位
いつもお疲れさまです。総務部です。
このたび、会議室の利用状況を踏まえ、予約ルールを一部変更することとなりました。
つきましては、下記のとおりご案内いたします。
記
1. 変更日:来月1日より
2. 変更内容:予約は原則として2週間前から受け付けます
3. 長時間のご利用は、事前に総務部までご相談ください
限られた会議室を有効に活用するための措置ですので、
何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
以上
次に、1章の指示文と2章の材料を付けて送りました。返ってきた文です。
件名:10月1日から、3階の小会議室A・Bは1枠1時間になります
社員各位
10月1日(木)から、3階の小会議室A・Bの予約ルールを変更します。
変わるのは、1回の予約で押さえられる時間だけです。
1. 変わること
1回の予約で押さえられる時間が、2時間から1時間になります。
対象は3階の小会議室A・Bの2部屋です。大会議室は変わりません。
2. 1時間を超えて使いたいとき
続けてもう1枠を予約すれば、そのまま使えます。申請は要りません。
3. 変える理由
小会議室の予約のうち6割が1時間以内に終わっているのに、
2時間で押さえられたままになっているためです。
なお、大会議室を同じルールにするかは、まだ決まっていません。
ご不明な点は、施設担当(内線2210)までお願いします。
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材料のうち、文へ入れなかったもの
・ありません
上の版に、日本語の誤りはありません。 読み比べても「ここが間違い」とは言えません。
違うのは中身が実在するかどうかだけです。
4. 書いたあとに、材料に無いことを並べさせる
上の版を貼り直して、2章の材料を付けて、こう聞きました。
次の文のうち、【材料】に書かれていないことを箇条書きで並べてください。
言い回しの違いではなく、事実として材料に無いものだけを挙げてください。
返ってきた答えです。
・「総務部」という部署名。材料に部署名はありません
・「来月1日より」という開始日。材料の開始日は10月1日(木)です
・「2週間前から受け付けます」というルール。材料にこのルールはありません
・「長時間のご利用は事前に相談」という手続き。材料に手続きはありません
・「限られた会議室を有効に活用するため」という理由。
材料の理由は「6割が1時間以内に終わっている」です
5件です。 そして、材料にあった7行のうち、この文に入っていたものは0行でした。
並べるとこうなります。
| 見るところ | 何も渡さない版 | 材料を渡した版 |
|---|---|---|
| 開始日 | 来月1日(材料に無い) | 10月1日(木) |
| 対象の範囲 | 書いていない | 3階の小会議室A・B |
| 変更の中身 | 2週間前から予約(材料に無い) | 2時間 → 1時間 |
| 理由 | 有効活用のため(材料に無い) | 予約の6割が1時間以内 |
| 決まっていないこと | 書いていない | 大会議室は未定 |
この確かめ方の要点は、文を読み返さないことです。 読み返すと、日本語の自然さのほうに目が行きます。
5. うまくいかないとき
3つとも、そのまま貼れる文を置いておきます。
材料を渡したのに、まだ書いていないことが混ざる
材料の中に、決めきっていない行が残っています。
「10月ごろから」のように幅のある書き方をすると、AIはどこかで1日に決めます。
幅のまま書いてほしいなら、1章の【守ること】へこの1行を足してください。
・材料に「10月ごろ」のような幅のある書き方があるときは、
幅のまま書いてください。1日に決めないでください。
文が固すぎて、社内の空気に合わない
【形】の指定を足してください。 形の話として渡します。1章の【形】を、この3行に差し替えます。
【形】件名と本文。件名だけで内容が分かるようにする。本文は番号付きの3点まで
文体は「です・ます」。本文の前に前置きを1文だけ入れる
1つの項目は2行以内
材料を減らして調整しないでください。 材料を減らすと、また埋められます。
材料を書き出すほうが時間がかかる
そのとおりです。 3行で済む変更なら、自分で書いたほうが速いこともあります。
手元にメモがあるなら、材料の書き出しから頼めます。 先にこれを貼ってください。
次のメモから、社内のお知らせに必要な材料だけを箇条書きで抜き出してください。
抜き出すのは、①変わること ②対象の範囲 ③開始日 ④理由 ⑤例外や抜け道
⑥まだ決まっていないこと ⑦問い合わせ先 の7つです。
メモに書かれていないものは「メモに無し」と書いてください。推測で埋めないでください。
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(ここに手元のメモを貼る)
出てきた「メモに無し」が、自分で決めることの一覧になります。
この手順が効くのは、読む人が多くて、後から「聞いていない」と言われると面倒な文です。書く速さより、質問が減ることのほうが大きくなります。
材料を集める段階から人に聞くなら、議事録をAIに書かせる。コピーして貼るだけの手順の形が使えます。決まったことと決まっていないことを分けた議事録は、そのまま材料になります。
やってみて分かったこと
今回のゴールは「そのまま社内へ流せるお知らせ文を受け取ること」でした。結果は、達成です。 材料を渡した版は、日付と内線番号を確かめれば出せます。
ただ、いちばんの発見はそこではありませんでした。
遅いのは、書くところではありませんでした。 材料を書き出すところです。
材料の7行を書き出すのに、思い出したり調べたりで時間がかかりました。書き出したあとは、数秒で文になりました。
つまりAIが肩代わりしたのは、文章を組み立てる作業だけです。 何を伝えるかを決める作業は、こちらに残りました。
だから「文章を書くのが苦手だから頼む」は、たぶん外します。 苦手なのが「言葉を並べること」なら効きますが、「何を書けばいいか分からない」なら、材料の段階で同じところで止まります。
確かめていないことも書いておきます。
- 送ったのは、それぞれ1回ずつです。 AIの出力は毎回同じにはなりません。
- 材料に無いことを並べさせた答えも、同じAIが出したものです。 見落としがあっても、この方法では分かりません。
- 架空の会社の、架空の変更で試しました。 実在の社内規程で試したものではありません。
- 読んだ人からの質問が減ったかは測っていません。 出していないので測れません。
次にやること
まず、最近自分が出したお知らせ文を1通選んで、4章の質問だけをやってみてください。 書き直す必要はありません。
材料を箇条書きにしてから、その文を貼って「材料に無いことを並べて」と聞きます。0件なら、その文はもう十分です。
そのあとで、次に書く1通から1章の指示文を使ってください。指示文より先に、材料を書き出す順番をおすすめします。
長い資料から材料を拾うなら、長い文章をAIに要約させる。数字と「決めること」を落とさない頼み方へ。落ちたものを最後に並べさせる形が、材料づくりと同じです。
社外の相手へ同じことをするなら、英文メールをAIに翻訳させる。「前向きに検討します」が相手にはYesと読まれるへ。あちらは、書いてあることが相手にどう読まれるかの話です。
社名や金額を貼るのが不安なら、社内の資料をAIに貼っていいのか。社名と金額を伏せて貼り、答えを元に戻す手順へ。材料の箇条書きにも、社名と金額はそのまま入ります。
使うときの注意
AIが書いた文でも、出した責任は出した人にあります。
- 勤務先がAIの業務利用を認めていない場合は、材料の箇条書きも貼らないでください
- 社内規程・人事・金額に関わる文は、必ず所管の部署に確認してから出してください
- 日付・部署名・内線番号は、AIが書いた形のまま信じないでください
確かめる場所は3つだけです。 日付・固有名詞・数字。ここだけ見れば、材料に無いものはほぼ拾えます。
練習には、この記事の架空の材料をそのまま使えます。 実際の仕事で使うときは、出す前に必ず4章の質問をしてください。